Cultural Strategist(文化的戦略家)を目指して
Cultural Strategist(文化的戦略家)という言い方は、インダストリアルデザイナーの川崎和男氏によるもので、彼の「高度な機能を備えた車椅子」や「人工臓器のデザイン」という業績からすれば、もはや行っていることは、はるかに「デザイナー」という概念を超えているものです。
昨今、『デザインの次に来るもの』や『世界のエリートはなぜ”美意識”を鍛えるのか』など、従来の「デザイナー」や「ビジネス・エグゼクティブ」という概念では、時代を捉えきれないということが言われています。今や、テレビや新聞もインターネットの出現によりその役割が極めて限定的になってきたように思えます。
時代が激しく揺れ動く中、過去の社会規範やイデオロギーなどの上に作られたものでは、真実に迫れない、すなわち、これまでに作られた基礎はすでにひび割れが入り、家を建てるなら、もっと深い基礎や別な基礎を作らなければならないということではないでしょうか?
一方で、限界のみえてきたこれまでの社会基盤や社会秩序から透けて見えるものは、人間の”生(ナマ)の欲望や欲求”です。これは、日本ばかりでなく、世界でも大きな潮流になってきています。トランプの「アメリカファースト」やEU離脱を表明しているイギリス、さらには全世界的に顕在化してきている人種差別など、何のてらいもなく自己利益を追求する姿です。
しかしながら、私たち人間は、この欲望や要求を消し去ることは出来ません。
今日、人類の発展は、この欲望や欲求があってこそ成り立ってきたものです。
問題は、これらが暴走することなく、人類の発展にとって、バランスの良い状態になければならないのです。
そして、このバランスをとるのが、「知の力」や「文化力」というものではないでしょうか?
資本主義、民主主義、共産主義、社会主義、金権主義など多くのイデオロギーに限界や金属疲労が見える中で、最早、政治力、経済力では私たちを救うことは出来ません。唯一救えるのが「文化力」です。
従って、今日的諸問題を扱うには、その根底となる「文化力」にまで戻り、それを拠り所に考えを進めるしかありません。
Cultural Strategistとはまさに、このような思考スタイルをもつことと考えられます。
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